一般的なフレックスタイム制度に対応する場合、「勤労の獅子」ではオプションのお申し込みが必要となります。計算式の追加設定も必要となりますので、お手数ですがサポート窓口までご連絡ください。
本記事では厚生労働省からの情報をもとに、フレックスタイム制度の一般的な説明をしております。フレックス制度の解説・導入については厚生労働省からパンフレットも公開されています。よろしければこちらもご覧ください。
■フレックスタイム制度について
労働者が、自由に始業時刻と終業時刻を決められる制度です。労働時間を1日で管理するのではなく、1か月単位の労働時間で管理していることが特徴となります。
フレックスタイム制は1日、1週間の枠での時間外労働は発生せず、清算期間全体で法定労働時間の枠を超えた場合にのみ時間外労働時間の適応がされます。
そのため比較的長い期間内で合算して、労働者が始業・終業時刻を柔軟(フレックス)に選べる制度となります。労働者はこの期間の長さを、定められた枠の時間の中で選択することができ、この枠の単位を「清算期間」と呼びます。
期間は2019年4月から「最長3ヵ月間」に延長されました。ただし、1か月を超える清算期間のフレックスタイム制を導入する場合は、労使協定を結んだ上で労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
■フレックスタイム制度のメリット
・あらかじめ働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。
・労働者にとっては、日々の都合に合わせて、時間という限られた資源をプライベートと仕事に自由に配分することができるため、プライベートと仕事とのバランスがとりやすくなります。
フレックスタイム制の導入によって、労働時間を効率的に配分することが可能となり、労働生産性の向上が期待できます。また、仕事と生活の調和を図りやすい職場となることによって、労働者に長く職場に定着してもらえるようになるなど、使用者にとってもメリットがあります。
■フレックスタイム制度の導入ルールとポイント
Point 1.就業規則等への規定と労使協定の締結が必要となります。
・就業規則等に、始業・終業時刻を労働者の決定に委ねることを定めてください。
・労使協定で制度の基本的枠組みを定めてください。
Point 2.時間外労働に関する取り扱いが通常とは異なります。
労働者が日々の労働時間を自ら決定することとなります。そのため、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、ただちに時間外労働とはなりません。逆に、1日の標準の労働時間に達しない時間も欠勤となるわけではありません。
清算期間における実際の労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠(※)を超えた時間数が時間外労働となります。(なお、時間外労働を行わせるためには、36協定の締結が必要です。)
例えば、1か月を清算期間とした場合、法定労働時間の総枠が以下のとおりとなるため、清算期間における総労働時間はこの範囲内としなければなりません。
(※1)特例措置対象事業場・・・常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く。)、保健衛生業、接客娯楽業のこと。
(※2)については、週の法定労働時間が44時間となるため、上記の式において1週間の法定労働時間を44時間として計算します。ただし、清算期間が1か月を超える場合には、特例措置対象事業場であっても、週平均40時間を超えて労働させる場合には、36協定の締結・届出と、割増賃金の支払が必要です。
Point 3.清算期間における総労働時間と実労働時間との過不足に応じた賃金の支払いが必要です。
清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不足に応じて、以下のように賃金の清算を行う必要があります。
■法改正(2019年4月施行)の内容について
Point 1.清算期間の上限を3か月に延長します。
今回の改正によって、フレックスタイム制の清算期間の上限が3か月となりました。これまでは、1か月以内の清算期間における実労働時間が、あらかじめ定めた総労働時間を超過した場合には、超過した時間について割増賃金を支払う必要がありました。一方で実労働時間が総労働時間に達しない場合には、
・欠勤扱いとなり賃金が控除される
・仕事を早く終わらせることができる場合でも、欠勤扱いとならないようにするため総労働時間に達するまでは労働しなければならない、
といった状況もありました。
清算期間を延長することによって、2か月、3か月といった期間の総労働時間の範囲内で、労働者の都合に応じた労働時間の調整が可能となります。
Point 2.清算期間が1か月を超える場合でも、繁忙月に偏った労働時間とすることはできません。
1ヶ月を超える場合には以下を満たさなければならず、いずれかを超えた時間は時間外労働となります。このため、月によって繁閑差が大きい場合にも、繁忙月に過度に偏った労働時間とすることはできません。
・清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えないこと(=清算期間全体の労働時間が、週平均40時間を超えないこと)
・1か月ごとの労働時間が、週平均50時間を超えないこと
清算期間全体と1ヶ月ごとに分けた時期のいずれかで規定時間を超えた場合に、時間外労働に対する割増賃金を払う義務が使用者に発生します。(※1日ごとの労働時間には制限はありません。)
加えて、法改正後における時間外労働の上限規制(月100時間以上の労働の禁止)にも注意が必要です。
【規定違反の例】
・清算期間を通じて週平均40時間を超えている。
・清算期間内のいずれかの月において、終了時に週平均50時間を超えている。
Point 3.清算期間が1か月を超える場合には、労使協定の届出が必要です。
清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を所轄の労働基準監督署長に届け出る必要があり、これに違反すると罰則(30万円以下の罰金)が科せられることがあります。清算期間が1か月以内の場合には届出は不要です。
Check! 完全週休2日制の事業場におけるフレックスタイム制
これまで、完全週休2日制の事業場でフレックスタイム制を導入した場合には、1日8時間相当の労働であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が、法定労働時間の総枠を超えてしまう場合がありました。
今回の法改正では、この問題を解消するために、以下の改正も行っています。
”週の所定労働日数が5日(完全週休2日)の労働者を対象に、労使が書面で協定(労使協定)することによって、「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることが可能”
これによって、労使が協定すれば、完全週休2日制の事業場において、残業のない働き方をした場合に、曜日の巡りによって想定外の時間外労働が発生するという不都合が解消されます。
上記の例の場合、
清算期間における総労働時間 = 7時間45分×23日 = 178時間15分 = 178.25時間
に対し、
法定労働時間の総枠 = 8時間×23日 = 184時間
となり、清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠に収まります。
※記事内の文章・キャプチャについては、厚生労働省のパンフレットを引用しています。